平成の大合併の時限爆弾がそろそろ破裂する話

ひさしぶりのブログ更新ですが、各地で地味にくすぶり、燃え始めている、平成の大合併の後始末について触れてみたいと思います。

合併が一番の盛り上がりをみせた2003年(平成15年)から2005年(平成17年)を経て、1999年3月末に3,232あった市町村の数は、2006年4月には1,820にまで減少しました(2013年1月末時点では1,719)。合併そのものには個々のケースで様々な事情がありますし、メリットデメリットもそれぞれ数多く挙げられますが、現実として約14年の期間に全国の市区町村は半分近くになったわけです。平均すると、ひとつの自治体が抱える面積・人口もそれぞれ倍増し、基礎自治体がアクセスしなければならない範囲は大きく拡がりました。

合併件数はどれくらいだったのでしょうか。

合併新法が施行された2005年(平成17年)4月を一つの区切りとして見てみると、それ以前の旧法下の1999年4月~2005年3月末の間に581件、2005年4月~2010年3月末に61件の合併があり、合わせると642件となります。またこの合併に関連した市区町村は約2,100団体にも上り、実に全国の地方自治体の3分の2近くがこの期間にその行政の形を変更したことになります(このあたりの詳細は総務省の市町村合併資料集を参照のこと)。

平成の大合併のピークである2003年から2005年の間には、400件以上の合併が成立しており、それぞれの市区町村は今年(2013年)から再来年にかけて合併10周年を迎えます。

ここからが今回の本題ですが、平成の大合併を促した一つの要因として「合併算定替」という「特例」があります。これは簡単に言うと、(旧合併特例法の定めに基づき)「合併後10年間は合併前の旧市町村ごとに算定した普通交付税を足して、その総額を配分する」というものです。

通常だと、合併した場合には合併前に比べてスケールメリットが生まれるため、自治体を運営するための経費(需要額)は減少すると考えられます。普通交付税は、自治体がまかなう収入が公共サービスに必要な経費に満たない場合に、それを補うため配分されるものなので、合併後に効率化され減少する経費を前提とすると、一つの団体として計算した場合(これを「一本算定」と呼びます)には合併前よりもその交付が少なくなるのが一般的です。

ところがこの特例により、合併後10年間は旧市町村で受け取っていた普通交付税の金額分を自治体は得ることができます。この額は11年目から5年間かけて段階的に削減され、16年目に「一本算定」されます。すなわち、ピーク時に合併した市区町村は、いままさにこの「合併ボーナス」の縮小に直面し始めているわけです(2005年3月末までに合併した市区町村は、遅くとも2015年度からは普通交付税の優遇が縮小していく)。

合併ボーナスの額は自治体によって様々ですが、削減前の交付額と一本算定した後の額との差額が全体の2割ほどになる自治体もかなり多いのが現状です。この場合単純に考えると、一本算定後はコストを1割以上は圧縮して行政運営しなければならないということになります。

すでに多くの地方自治体ではこの「一本算定」にともなう収入の激減による財政の悪化が問題となっており、それに対応する動きも出ています(2013年5月28日の大分合同新聞の記事など参照)。
しかしながら、こうした点は合併前から想定できたことであり、また合併直後にも分かっていなければならなかったことのはずです。ムダなコスト削減に邁進するのは地方行政のあるべき姿ですが、いまさらこの一本算定(で減少する交付税収入)への対応に右往左往している自治体は、いったいこの10年間何をやってきたのかという話も出てくるでしょう。

多くの自治体は基金の積み立てなどにより、この一本算定による普通交付税減に対応しようとしていますが、基金は当座の貯金のようなものであり、問題の抜本的解決にはなりません。およそすべての自治体でかけ声のようにいわれる「行財政改革のさらなる推進」はもちろん重要ですが、仮に合併算定替の期間中でもかつかつで財政を回しているような自治体に、ここからさらに1割以上のコストカットは可能でしょうか。
それを考えると、地方自治体には明らかに「成長戦略」が必要です。忘れてはならないのは、今後「いまと同様か、それより少し下がったレベルの公共サービスを維持するにも、成長が必要になる」ということです。

同時に、平成の大合併を経た地域に住む住民には、ボーナス期間に政治が何をしてきたのかを検証する姿勢も必要でしょう。一本算定は合併時点ですでに分かっていた事態であり、それを前提とした行財政改革の数字が出ているのか、少なくとも基金の積み立てなどによって次の世代の財政運用に支障が出ないレベルを維持できているのかは、数字を見れば一目瞭然です。そして、もちろんこれは個々の行政職員のできる範囲でどうにかなる問題ではありません。政治の課題です。

余裕のあるボーナス期間に適切な打ち手を出せなかった自治体は、大きな変化を遂げない限り、平常運転を安全にこなすことさえ難しいのは間違いないでしょう。

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