B級グルメに地域活性化策の未来はあるか?

参考イメージ

ここ数年来、いわゆるご当地グルメブームが続いています。今月12、13日に兵庫県姫路市で開催された「第6回B-1グランプリ」(岡山県真庭市の「ひるぜん焼そば好いとん会」が1位を獲得)には2日間で50万人以上が訪れるなど、その人気はとどまるところを知りません。
このグランプリなどを通して全国に名が知れると、料理目当ての観光客が増える効果も期待できることから、地域活性化策として地元の食に注目も集まっています。実際、このグランプリなどへの参加を目指して、さまざまな地域でB級グルメが開発されています。

B級グルメ:イソギンチャク使っただご汁開発 福岡・柳川(毎日新聞)
卵かけごはん…ではなく「卵かけごはん焼き」 – 石川・鶴来の新B級グルメ(マイナビニュース)

食を通した地域活性化というのは大切だとぼくも思いますし、B-1グランプリ等を始めとする食のイベントによる動員数・話題性は、波及効果も高いです。ですが、ここには一つ落とし穴があります。

お気づきの通り、毎年イベントやその広告効果が大きくなったために、「こうしたグランプリやメディアに取り上げてもらうためにご当地グルメを開発する」ケースが増えたということです(実際、最近帰省した際に知ったのですが、ぼくが高校時代を過ごした街も最近「カレーのまち」と称して積極的にPRをしているようです。ぼくにはその街でカレーを食べた記憶すらありませんが。。。)。

必ずしもすべての地域に、独特な、昔からその土地土地で食べられていたもの、その地域で長年愛されてきた食べ物があるとは限りません。しかしながら、「いま盛り上がっているご当地グルメによって地域に人を呼び込み、経済効果を上げたい」という希望があるときに、それは「ご当地グルメの開発」に行き着きます。「地域の歴史性」は乏しいですが、地域を活性化する手段として、そのこと自体はいいことだと思います。

ただ果たして、そのようにしてすでに濫立しているご当地グルメがこれから先「飽和に達しない」と、誰に言えるでしょうか。そしてその「新たに開発されたご当地グルメ」がその地域を代表する食べ物として、地域の住民や出身者にすぐさま受け入れられ、愛されるということはありうるのでしょうか。
他のご当地グルメとの「競争の激化」という観点からも、マスメディアなどを経由したパブリシティ効果という観点からも、「地域活性化のために新たに開発されたご当地グルメ」の行く先はかなり厳しいものになっていくでしょう。歴史のないものが地域に根付き、サステナブルなモノとして定着するには、よほどの物語が必要です。

こうした状況を考えたとき、一つのあたりまえになっている考え方の存在に思い至ります。
それは、地域活性化を意図的に起こそうとするとき(=地域活性化策を打つとき)には必ず、他の地域との差別化ができるような「地域資源」を見つけ出し、それを目立たせる(あるいはそれに商品価値を付与する)必要があるという、マーケティングプロセスとでも言える視点の存在です。
ここにあるのは「市場における希少性、あるいは差別化こそが大切」という考え方です。それを実現できるようなものを地域のなかに発見できた後でようやく、その商品価値をいかにして高めていくかを考えていくことになります。
当然、そうした希少性のある資源を持っていない地域は数多くあります。だからこそ、有名人の記念館を誘致しようとか、来年の大河ドラマの主役として地元にゆかりのある歴史上の人物を推そうとか、あるいはB級グルメを開発しようといった話が生まれるわけです。

こうしたあり方は否定しようもなく正しいとぼくは思います。
ただ同時に、この「希少性、差別化から始まる地域活性化策」は、ぼくらにとってあまりに昔ながらの資本主義的なやり方、つまり市場競争的な発想だとも思うのです。
この視点だけでは、わたしたちはコミュニティの本質を捉え損なってしまうのではないでしょうか。

こうした視点に加えて、ぼくが地域活性化を考える上で大切だと考えているのは「市場のなかでの希少性」とは反対の視点です。それはとりあえず、「あなたのなかでの希少性」とでも呼べるものです。
地域とはなにか、あるいはそこから一歩先に進んで「コミットする地元とは何か」を考えたときに、そこで思い浮かべるもの、もう一度経験したいものは、いわゆる市場的な意味での希少性とは違います。私たちは地元について思うとき、「ありふれたものに希少性を見いだし」ます。登下校の際の何でもない風景や、友達との会話。突き詰めれば、親が作ってくれたカレーライスみたいな話です。それは過去の思い出や現在の生活から生まれる、個々人の中にしか見つけられない希少性であり、ゆえに市場化の視点で掬い上げるのことは困難です。もちろん、だからこそ評価軸の作りづらいものでもあります。

「市場のなかでの希少性」にコミットした地域活性化策は世の中に数多くありますし、その大切さは今後変わることはありません。なぜなら、グローバル化、世界市場化が避けて通れない現在、地域の(市場に最適化した)ブランディングこそが経済的な意味での地域の未来を形作るからです。
しかしながら、「あなたのなかでの希少性」を捉えるような地域活性化策もまた、同じように重要なことは間違いありません。なぜならそれこそが、そもそも市場の基盤となるような「社会」あるいは「コミュニティ」を活性化するからです。わたしたちが現在進めている「30歳の成人式」プロジェクトもまた、こうした視点を共有しています。

とまあ、B級グルメからだいぶ遠いところまできてしまいました。
市場のメタファーで地域活性を語ることがもてはやされている昨今ですが、それ自体を決して否定せずに、その視点からは見えにくい「競争の向こう側にある個々人の人生にアクセスできるようなプロジェクト」をできる限り全国で進めていこう。そう思う冬の朝なのでした。

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