本:西口敏宏著『遠距離交際と近所づきあい-成功する組織ネットワーク戦略』

 

今日紹介したい本は、西口敏宏著『遠距離交際と近所づきあい-成功する組織ネットワーク戦略』という本です。この本には、これからの地域活性化を考える重要なヒントがあります。

本書の主張は、一言で言えば、成功する組織の秘訣は、「濃厚な近所づきあい」と「遠距離の交際」の絶妙なバランスをとることで、どちらか一方だけ充実していても、組織としては成功しないというものです。そのことを、数学的にも解析されている「スモールワールド・ネットワーク理論」というものに則って、証明しています。

詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ここでは、本書でたくさん挙げられている事例の中で、中国・浙江省の温州の事例を紹介したいと思います。

温州と言うところは、かつては、中国の最貧地域の港町でした。地元では食べていけないため、多くの人間が離郷せざるを得ませんでした。しかし、1978年の「改革開放」以来、海外在住の温州人は40万人となり、うち、20数万人が欧州に滞在して、皮革業、服飾業を中心にネットワークを築きあげました。そして、国内でも150万人の温州商人が地方を巡り、人間、財、資金が、彼らと故郷の間を行交い、商業的成功を収めたそうです。国内外で活躍する彼ら「外出人(離郷人)」が富を故郷にもたらし、温州は、飛躍的な成長をしたそうです。

ここで重要なのは、けっして温州人が個人として優秀だったわけではないということです。彼らの学歴は、概ね中卒程度で、中国平均と比べても、決して高い水準ではないどころかむしろ低かったそうです。「外出」による情報と人のネットワークが、個人の認知限界と資源の制約を乗り越えて、繁栄をもたらしたわけです。

このようなネットワークが重要とする考え方は、これからの日本の地方活性化を考える上で、示唆に富むものだと思います。今までの日本の地域活性化策は、多くの場合「中心」があります。つまり活性化したい具体的な「場所」での活性化策であり(例えば、商店街活性化や工場誘致など)、具体的な活性化する「主体」があるわけです(例えば行政や、地元商工会など)。温州の活性化の事例は、そうした「中心」のある活性化とは対極をなす事例です。温州の事例で筆者が見出したような、意思決定や活動の「中心」が特定の一点ではなく、ネットワークそのものあるとする考えを「ネットセントリック(netcentric)」と言います。

日本の地方の疲弊については、ここで改めて指摘するまでもないでしょう。高齢化と人口流出が続く中で、地方の「資源」は益々限られたものになっています。そうした傾向を踏まえた地域活性化策が、今求められていると言えるでしょう。

そしてこの「ネットワークを中心に据えた地域活性化」という観点からも、潜在住民(過去にその地域に住んでいた等のつながりがあり、いまも変わらず感情的な繋がりを保ち続けている人たち)と言うコンセプトがやはり重要であるということがいえます。「地域」を共通のキーワードとしつつも、地域に縛られない、広いネットワークを作ることが、地域の資源の限界、認知限界を突破することに繋がるはずです。


 

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