ある条例と潜在住民

2012年3月13日(火)、京都府与謝野町議会において「与謝野町中小企業振興基本条例」が全会一致で可決されました。この条例は、町内事業所の大多数を占める中小企業の振興が地域経済と地域社会の発展に欠かせないものであり、町民の生活を豊かにするものであることを地域全体で共有するために制定されました。ここでは、「潜在住民をイメージすることができたなら」という観点から条例を見てみたいと思います。

本条例は、町長の諮問機関である同町産業振興会議が中心となりまとめられたものです。基本的な構成としては、前文に加えて、次の12条「目的|定義|基本方針|基本施策|町の責務|中小企業者の役割と努力|経済団体等の役割|大企業者の役割|町民の理解と協力|人材の確保及び育成の支援|産業振興会議|委任」が盛り込まれています。条文の中身については、教育分野へも中小企業への配慮を求めている点をはじめ、多くの特筆すべき点があるなどと評価を受けています(京都大学・岡田知弘教授談)。また、議会においても「すばらしい条例」と議論が展開されていました。ぼくも好意的に受け止めているひとりです。

ただひとつだけ物足りないと思う点がありました。それは、「域外からの財の獲得をしていくために、地域全体は何をしていかなければならないのか」という視点が条文からは読みとれなかったことです。つまり、町民の生活を豊かにするためには、中小企業振興が不可欠、そのためには地域内循環経済の確立と域外からの財の獲得が必要であるという認識が示されています。しかしながら、その解決に向けてどのように行動をしていくべきかが条文化されたのは、地域循環経済の促進に対応するもの(第7条第4項・第8条第2項・第9条第2項)のみでした。

【ex】第9条第2項「町民は、消費者として町内において生産、製造、又は加工される製品の購買や消費、並びに町内において提供される役務の利用に務めるものとする」

産業振興会議でも、「地域内循環や地産地消の考えが理念として盛り込まれているが、外貨の獲得や外への情報発信・販売等、内だけでなく外の力が必要なのではないか」等の意見も出されていて、域外からの財の獲得のためには何かをしなければいけないという議論があったようです。しかし、条文化に至らなかった原因のひとつには、地域全体で域外からの財の獲得していくために、(例えば、ひとつの地場産品を販売していくためには)どのような外の力を使えばいいかを明確にイメージできなかったことを挙げることができると思います。

ここで登場するのが、プブリカが提唱している「潜在住民(過去にその街に住むなどしており、)離れた後もその地域に感情的なつながりを保ちつづけている人々」です。つい先日、公表された「平成23年度与謝野町統計書<暫定版>」によると、平成22年度現在で、住民基本台帳ベースの人口は24,203人、本籍人口は33,277人でした。このデータから、同町の潜在住民人口は、9,074人以上になると考えることができます。この少なくとも約9千人以上(配偶者なども考えるともっと)にものぼる潜在住民が「域外からの財の獲得」に寄与する「外の力」とイメージすることができたなら、この条例はまた少し違った表情を見せていたかもしれません。

与謝野町中小企業基本条例は理念型条例として制定されました。これから、掲げられた理念を基礎として、施策が講じられていきます。そのなかで、潜在住民コンセプトを手がかりにして議論がなされ、そのイメージを広げていくことができるなら、きっと有効な具体的施策につながっていくと思います。

提言書:http://www.town.yosano.lg.jp/open_imgs/info/0000007792.pdf

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