住民目線から地方政治家コストを考えると見えてくるもの

(前回のエントリーはこちら)

「地方政治家の給料・報酬はいくらくらいが適切か」を考えてきたこのシリーズですが、最後となる今回はいままでと異なる視点も交えてこの問題について考えてみたいと思います。

■ その地域の生活者と比較してみる

前回は地方政治家を「専門家集団、職能集団」としてとらえ、その代表格である弁護士の平均所得との比較をしてみました。
その一方で(なによりも大切なこととして)、地方政治家は私たち市民の代表でもあるわけです。専門職的な意味合いとは違った、それぞれの地域で異なる「生活者の感覚」に寄り添うべき存在でもあるでしょう。
そこで今回はまず、地域の個人所得額と地方政治家の給料・報酬を比較するところから始めてみたいと思います。前回までと同様に、京都府の基礎自治体を参照します。

これは各自治体ごとに、市町村税所得割の課税対象の「所得金額」を「納税義務者の数」で割った単純平均の平均所得額です。簡単なグラフですが、これを見るだけでも、同一都道府県内の各自治体間にかなりの差があることは分かります。

次に、前々回みてみた自治体別の「首長給料・議員報酬の年間額」(繰り返しになりますが、ボーナスや退職金などは含まれていません)を、この地域ごとの平均所得額でそれぞれ割ってみます。これによって政治家報酬が地域の平均的な個人所得の何倍にあたるかが分かります。結果は次のグラフのようになります。

首長給料を見てみると、和束町の1.3倍を例外として、他の市町村はおおよそ2.5〜4倍程度の範囲の中に収まっています。4倍以上となっているのは京都市、綾部市、宇治市、亀岡市であり、他の市町村と比べて相対的に高くなっています。
議員報酬については、京都市の3.2倍という数字が突出して高くなっています。この数字には含まれていませんが、前々回触れたとおり京都市の議員には政務調査費として毎月最大で40万円があてられていますので(2012年現在)、その点からもこの数字は目立ちます。
また議員報酬についてその他注目すべき点は、1倍を切る(地域の個人平均所得よりも低い)自治体が多く存在する点です。このグラフにはボーナス等を算入されていませんが、こうした町では政務調査費が支給されていない場合もあり、議員活動がこの金額からの持ち出しにならざるを得ないのが現状です。
この状況は「専業議員/兼業議員」という問題を、報酬面からも生み出しています。地方の市町村レベルでは議員報酬だけでは生活が難しく、議員は兼業せざるを得ない場合が多くあります。専門職として議員活動だけに従事することはオカネの面から難しいわけです。
この背景には、地方議員が一種の名誉職的なものとして扱われてきた歴史があります。また、現在地方においてプレゼンスを高めているいわゆる「改革派市長」は総じて、議員報酬の削減や定数削減をうたっており、これもまた議員の専業化を難しくしています。さまざまな主張はありますが、「首長は対立する議会の力をそぎ落としたいと思うのが常である」ということは忘れてはいけないでしょう。
これらを考慮に入れると、議員報酬の場合はその金額の高い低いを論じる前に、はたして議員は専業であるべきか、それとも兼業であるべきかという議論が十分にされることが重要だと私は思います。「あるべき議員像」について最低限のコンセンサスがないため、現在は報酬の基準が完全にダブルスタンダードになっていると言えるでしょう。

 

■ 政治家コスト全体を考える

ここまでは地方政治家一人あたりの給料・報酬について、「専門職としての側面から弁護士所得との比較」、そして「住民の代表という側面から地域の個人所得額との比較」を通して考えてきました。
最後に、一人一人の政治家コストではなく、首長・議員に支払うオカネを「意思決定コスト」として大きく一つのものとして考えることで、このシリーズを終わりにしたいと思います。

これは、各市町村で政治家にかかるコスト全体を住民数で割った、住民一人あたりが負担する政治家コストのグラフです。
具体的にここでは、各自治体の議会費(議員報酬や政務調査費、議長交際費などの議会関連の支出額。ただし、選挙費用や議会の施設費等は含まれていない)と首長の給料月額の一年分(ボーナスや退職金は含まれていない)を足したものを便宜上の「政治家コスト」としています。

見てもらえば一目瞭然ですが、住民一人あたりが負担する政治家コストは自治体の人口規模に反比例しています。
人口が1626人の笠置町は29,445円なのに対し、人口が1,474,015人の政令指定都市である京都市はわずか1,300円となっています。個々の政治家に対する報酬という点では高額のように見えていた京都市は、この視点から見ると、京都府でもっとも住民の政治家コスト負担額が低い自治体ということになります。
また少なくともこのグラフからは、久御山町や宮津市、福知山市や舞鶴市などが人口規模から見て相対的に、住民の負担する政治家コストが高くついている様子がうかがえます。

これは政治家コストが、人口規模の大小に伴って変動する変動費的な要素が少ないこと、つまり固定費的な要素の大きなコストであることを示唆しています。人口規模の小さい自治体においては、政治家コストは高くつくわけです。
平成の大合併のポイントの一つが市町村長や議員の大幅削減にあったことは周知の事実です。大合併の時代を経て、全国の自治体で行政改革が行われ、議員定数や議員報酬の削減が進んでいますが、そうした際にはこうした「住民一人あたりの政治家コスト」が一つの目安になると思います。

ここまで、地方政治家のオカネの問題について、3回にわたってさまざまな比較を通してその実態を見てきました。
はじめにたてた問いは「市町村の首長や議員の給料・報酬はいくらくらいが適正なのか?」というものでしたが、私自身、いくつかの異なる視点から見ることで、ある数字が高くも安くも解釈できることに気づきました。
政治家に対してどのような役割を期待するかによって比較、参照するデータも変わってきます。また、政治家コストを地域における意思決定コストとしてとらえた場合、各個人の報酬ではなく全体の報酬を考えた方がいいこともあるでしょう。

政治家に支払うオカネの問題というのは非常にデリケートであると同時に、地域住民の感情のフックにひっかかりやすい問題だと思います。
だからこそこうした話題を一つのとっかかりにして、自分たちが地域の政治家に求める役割について議論を深めることが重要だとあらためて感じたのでした。

 

Share on Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加

 

Tags:

Comments

No comments so far.

  • Leave a Reply
     
    Your gravatar
    Your Name
     
     
     

    WP-SpamFree by Pole Position Marketing