空き家問題を手がかりに地域の風景・景観の管理について考える

移住・交流推進機構の行う「全国空き家バンクナビ」より引用

少子高齢化は現在の日本にさまざまな影響を与え、解決するのが困難な問題を生み出し、強化しています。
加速する社会保障費の増大はもはや喫緊の課題ですし、介護問題も老老介護の前面化など、問題を複雑化させながら進行しています。限界集落などといった言葉の定着は、過疎の問題がもはやコミュニティの存立を超え生存の問題になっていることを浮き彫りにしました。そして、こうした問題はもはや、ありふれた日本社会の風景となりました。

こうした日本の風景にかかわる問題の一つに「空き家の増加」があります。少子高齢化による人口減によって、今後ますます管理の担い手のいない空き家は増えていくと考えられます。

そこでここでは、先日富士通総研の経済研究所が公開した研究レポート「空き家率の将来展望と空き家対策(PDF)」を参照しながら、この問題について見ていきます。
その上で、特に外部不経済(空き家があることで周囲にもたらされる悪影響)に注目しながら、「地域の風景・景観の保全は誰がどのように責任を負うべきか」という難問への手がかりを探ってみたいと思います。

まず、日本に空き家はどれくらいあり、そして今後はどれくらい増えていくのでしょうか。
レポートによれば日本の空き家数は年々増加を続けており、2008年の空き家数は757万戸、空き家率は13.1%に達しているとのこと。また、住宅の新設・滅失の条件を現状維持として想定すると(大きな対策をしないと仮定)、2028年の空き家率は23.7%(2008年と比べて10.6ポイントの上昇)となるとされています。これは2008年の二十年前、1988年の空き家率が10%弱だったことと比較すると急速な悪化と言えるでしょう。

またこのレポートが特に問題視しているのが、賃貸用や売却用の空き家ではない、「その他」に分類される空き家です。
「その他」に分類される空き家とは、賃貸・売却用として市場に出ているものではない空き家であり、居住者の転勤や入院などで長期不在となったり、高齢のため転居したり死亡したりした後で使う人がいない空き家のことです。こうした「その他」に分類される空き家は、2008年時点で空き家全体の35.4%を占めています。
売却用住宅の空き家率は15〜64歳の生産年齢人口の割合が高いほど高いのですが、「その他」の空き家率は65歳以上の人口の割合が大きいほど高くなっています。つまり、高齢化の進んでいる地域ほど「使うアテのない空き家」が多いわけです。

こうした、特に高齢化が進む地方における空き家の増大は、その地域に大きなさまざまな悪影響を与えます。
中でも注目したいのは、放置された空き家による風景、景観の悪化についてです。
空き家が目立つということは、そこが「管理されていない地域」だという印象を住民や訪問者に与えます。これは防犯・防災上の不安を増幅させるとともに※、地域イメージ(地域ブランド)を大きく毀損します。
※ ニューヨーク市の犯罪防止に効果があったとされる「割れ窓理論」などとの親和性も無視できないでしょう(割れ窓理論の効果についてはさまざまな異論もありますが、人間心理の描写としての妥当性は無視できないと思います)。

例えばある地域に、優れたサービスを提供している旅館があったとします。おいしい料理にきめ細やかな気遣い。旅館単体としては差別化に成功し評価を得ているのですが、同時にその地域には空き家が目立ち、訪れる人に荒廃した印象を与えます。
この場合、地域ブランドとしての評価は低いため、まちの評価はその旅館の評価へはつながりません。「まちの魅力が旅館の魅力の底上げをする」という効果が望めないわけです。

問題は、一事業者(一プレイヤー。この例では旅館)が顧客体験を考える際には地域の改善、ブランド力向上は避けて通れないにもかかわらず、地域のブランディングは他者の振るまい(この場合は空き家の増大)に左右され、コントロールできないように思われることです。

シャッター商店街や耕作放棄地の問題も同様ですが、こうした「風景・景観の悪化」がもたらす外部不経済は、地域のすべてのステークホルダーの行動様式や考え方をある程度規定します。
自分たちのまちを「こんなところだ」と思うレベルが低ければ、それはアイデンティティの拠り所としては貧弱になりますし、まちに関わるというコミットメントの意識も期待できなくなるでしょう。そうなると、風景・景観の悪化はより進行します。

ではこうした負のスパイラルを避けるにはどうすればよいでしょうか。どのようにすれば、「すでに悪化しつつある」地域の風景・景観の改善、保全を図ることができるのでしょうか。

例によって導入部分が長くなりすぎたので、、、その点については次回のぼくの担当分更新で考えてみたいと思います。

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